ボトックス注射が有効なシワ
顔面にできるしわのうちでも、普段はないのに表情によって目立ってしまうシワがあります。代表的なものは、眉をひそめたときにできる眉間部のタテジワや、笑ったときにできる目尻のシワなどです。
この薬は、眼瞼けいれん(目の周りの筋肉がピクピクと動いてしまって止まらなくなる病気)の治療薬として開発されました。ボツリヌス菌の毒素で末梢神経の伝達物質である「アセチルコリン」をブロックして筋肉を麻痺させて、表情ジワをなくすものです。運動神経から筋肉へ行く信号をブロックしますので、その筋肉は動かなくなります。筋肉が動かなくなることで、その筋肉の動きによってできるシワはできなくなるというわけです。
筋肉の動きを止めることでシワをつくらないようにする治療なので、表情を変える前からあるシワに対しては効果はありません。眉間、額、目尻、鼻に出来る笑いじわは治療可能ですが、口の周囲や首などは適応がありません。
注射の実際
当院は高品質で安全性の高いアラガン社製のBotoxのみを使用しています。中国製などのBotoxは使用しておりません。
ベッドに横になっていただき、注射部位を消毒します。ふつう眉間部位の場合3~6カ所、目尻の場合片側3~4カ所に注射します。注射の総量は1cc以下で、少し腫れが出ますが、それほど目立つものではないでしょう。その日のうちから、お化粧・入浴等は、普通通りできます。注射部位に若干の違和感・内出血などができる場合がありますが、数日以内に消えます。
注射部位は、無理にもんだりこすったりせずにそっとしておいてください。過度の運動・飲酒・長湯などは避けた方が無難ですが、日常生活には特に制限はありません。
Q&A
Q1.注射の後に副作用や後遺症はでませんか?
A.この薬が他の病気や後遺症を引き起こす可能性は考えられません。注射をすることによる一時的な副作用(出血、内出血、違和感、腫れ)は起こることがありますが、いずれもすぐに回復します。
Q2.注射は痛いですか?
A.非常に細い針を用いて、ごく少量を注射するだけなので、それほど痛いものではありません。
Q3.顔の表情がなくなってしまうのですか?
A.そのシワに関係のあるひとつの筋肉のみをねらって正確に注射しますので他の部位の表情に変化は現れません。
Q4.麻痺がきたら、その辺はしびれてしまうのですか?
A.しびれなどおこりません。なぜなら、この注射は運動神経にのみ作用して、知覚神経には作用しませんから、注射部位の感覚に変化はでません。
治療経過
注射後すぐに治療効果がでるわけではありません。1日後くらいから徐々に効果が出て、7日目くらいにピークに達するといわれています。
この治療の効果の持続は約6ヶ月といわれています。徐々に筋肉の動きが回復してきます。しかし、しばらくして麻痺していた筋肉は萎縮して弱くなっていますので、元の力よりはだいぶ弱くなっていくはずです。その時点で、再度注射を行うとなお効果的です。
この注射は安全性も高く、だれにでも、何度でも使えるすばらしい方法ですが、使える場所には限りがあります。もっとも効き目が大きいのは、眉間と目尻です。額の横ジワにも効果が高いのですが、眉毛がさがって上まぶたのたるみが増えることがありますので少しづつ慎重に注射する必要があります。口の周りのシワにも一部有効ですが、効くものと効かないものがありますので、医師にご相談ください。それから、まれに、2回目以降の注射で効果がでなくなってくる体質の人がいます。その場合は、他の方法を用いる必要があるかもしれません。
ボトックスビスタ 料金
ボトックスビスタ 眉間、両目尻、額 眉間、額、目尻 1カ所 50,600円、2カ所 88,000円
ボトックスビスタ 両ワキ(多汗症治療)1回(100単位) 77,000円
※初診の場合は、初診料 3,000円が必要です。
※保険診療適応外の自由診療になります。
副作用
安全性は比較的高いと考えられています。欧米では10年以上の歴史があり、60カ国以上の国々で広く試験が実施され、様々な疾患の患者に使用されてきました。また最もよくみられる副作用としては、注射部位における痛みと注射跡、皮下出血です。少数の患者に短期間筋肉の働きが弱くなることがあります。例えば1~2週間ほどまぶたや眉毛が一時的にやや垂れ下がるなどです。この場合は積極的にこの副作用を消すような治療法はなくて、時間とともに効果が消えていくのを待ちます。永久的な副作用は今まで報告されていないようです。妊娠中の女性や授乳中の方に対する安全性の研究は十分に行われていないため、妊娠中、授乳中はおすすめできません。この薬にアレルギーのある場合、皮膚に発疹などが現れることがあります。この場合は次に投与を決定するときに大切なので必ず申し出てください。