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  5. 光老化とスキンケア(紫外線対策)

光老化とは

人は思ったほど歳をとらない。最近までシミ・シワ・たるみを「しょうがない」と思ってきたが、それは「大きな勘違い」。肌の老化の80%は紫外線による光老化でした。そしてこの80%の老化は予防とある程度の修復が可能ということです。

紫外線は直接肌にダメージを与える上、肌を酸化(サビ)させるフリーラジカル(活性酸素)を発生させ皮膚細胞DNAを傷つけ破壊します。受けたダメージは少しずつ蓄積し、肌の老化現象となって後々現れます。すなわちメラニン色素が増加し、皮膚はくすみ始め、シミが発生したり、濃くなったりします。また皮膚の奥深くでは、皮膚の張りに大きな役割を果たしているエラスチンやコラーゲンが破壊・変性されて、張りがなくなったり、しわが増えたりもします。

これを光老化といい、自然の老化とは区別されています。どうしようもない、遺伝子できまった老化はたった20%です。この老化はスキンケアではどうしようもありません。残りの80%の老化は光老化、紫外線による老化です。つまり美容的に気になるシミやしわの80%は、実はこの光老化の賜物であるということです。

光老化の兆候は、毎日の紫外線暴露の累積の結果おこります。光老化は乳児期から始まり一生を通して続きます。皮膚へのダメージは、10~40年かけてゆっくりと発現します。光老化はだいたい10代のころから皮膚の内部で進行が始まり、20代で臨床的に所見が得られ、30代になるとほぼ誰にでも現れます。1920年代までは人類は積極的な日焼けはさけられてきました。しかし皮肉なもので女性をコルセットから解放したココシャネルが小麦色に焼けた肌に引き立てられる真っ白なドレスを発表しました。それ以降積極的な日焼けが流行するようになり、肌の老化がスピードアップされたのです。

でもうれしいことに今まで皮膚の老化は予防不可能な非可逆的な変化と思われていましたが、最近光老化は制御可能な皮膚の老化としてクローズアップされてきているのです。

皮膚の構造

簡単に肌の構造を説明していきます。皮膚は二つの層によって構成されています。つまり表面に近い表皮とその下の真皮です。さらにもっとも皮膚の上層に皮脂膜と角質層があります。最近スキンバリアという考え方が注目されているように、皮脂膜と角質層はバリアとして大切な働きをします。すなわち水分の蒸発も防ぎ、アレルゲンや細菌ウイルスの侵入を防ぎます。(ドライスキン、アトピックスキン、化粧かぶれなどの部分はこのバリア層が破壊されています。)

表皮は一番下の層の細胞ケラチノサイトが分裂成長し、上の方へ移動していきます。子供では正常なターンオーバーで4週間で上までいきますが、年とともにこれがおそくなります。最上層に板状の角質細胞が積み重なっていますが、この細胞はすでに死んだ細胞で、やがて表層から少しずつはがれ落ちていきます。脱落するまでは、皮脂や汗とともに膜を作り、体を守る重要なスキンバリアとしての働きをします。

表皮の細胞は遺伝子(DNA)を含む核を持っていますが、この核を傘のようにおおって紫外線から保護するのがメラニンです。メラニンははじめは無色ですが、ケラチノサイトへ運ばれるとき、紫外線にさらされ酸化されはじめて色が付きます。(くわしくはシミのページで⇒)メラニンをつくるのがメラノサイトです。

真皮は柱のように表皮を支えるコラーゲンとコラーゲンを支えるエラスチンが存在します。このコラーゲンとエラスチンが皮膚の張りを作っています。コラーゲンやエラスチンをつくるのが線維芽細胞です。

光老化の兆候

1)ざらざらとした皮膚
バリア層におこるダメージや角質肥厚によって乾燥化して、ざらざらするようになります。
2)シワ、たるみ
真皮には表皮を支えるコラーゲンとエラスチンが存在し、そのコラーゲンやエラスチンをつくる繊維芽細胞があります。紫外線があたるとこの線維芽細胞のDNAが傷つけられコラーゲンやエラスチンの量が減ったり、質が悪くなって皮膚は正常な張りがなくなり結果としてシワやたるみができていきます。
3)弾性繊維症
首のところによく見られる小さな塊のこと。不良のエラスチンのかたまり。エラスチンは紫外線によって破壊されると球状に凝集します。
4)くすみ
血流が減り、青白い肌あるいは黄色い肌の原因となります。
5)シミ
シミはなぜできるか。メラニンは悪者のように思われていますが、実は紫外線があたると、細胞の核を紫外線から傘のように守るたいせつな働きをします。そのメラニンを作る細胞がメラノサイトです。ところが、紫外線があたりすぎると、メラノサイトのDNAがダメージを受け、メラノサイトの暴走がおこり、紫外線があたっていないのにメラニンをどんどん作ってしまい、シミになります。
6)黒ニキビ
長期的かつ激しい太陽によるダメージを受けると、顔の脂分の多いエリア、すなわち額や鼻に黒ニキビ(black heads)があわられます。
7)日光角化症
表皮の角化細胞が紫外線、とくに中波長紫外線によって核DNAを損傷され、遺伝子変異が起こり角化症が現れます。皮膚がんの前癌状態といえます。もっとも光老化でおそろしいのは皮膚がんであります。すでに南半球の白人においては皮膚がんの発生率が急増しており、日本でもすでに母子手帳から日光浴の文字が消えています。
※光老化のダメージ区分

年齢ダメージの程度シワの程度その他の症状
20~30軽微シワなし軽微な色素沈着。小さいシワ。ブラックライトで見える色素沈着。
30~40やや進行表情が変化するときに、シワが見える初期の日光ホクロが見える。微笑みのとき、平行したシワが見え始める。
40~60より進んだ毛細血管拡張症表情が静止しているときに、シワが見える明確な色素沈着。目に見える角化症。表情が静止状態でも見えるシワ。
60~70重症シワだらけくすんだ肌。皮膚癌。シワだらけで、健康な皮膚の部分がない。

紫外線とは

私たちは、買い物・車の運転・道を歩いているときなど、日常生活の中で紫外線を浴びています。しわ私たちの肌の老化の80%は光老化(紫外線が主な原因で起こる老化)とされています。紫外線には3種類=UV-A、UV-B、UV-C があります。

▽UV-A (Aはaging=老化を意味する)
A波は、オゾン層を通過して、皮膚の奥(真皮)まで届きます。秋や冬、曇りの日や雨の日でも窓・衣服を通過し私たちの皮膚へ降り注ぎ、ゆっくりとダメージを与え、老化に一番影響を与えているといってもよいかもしれません。A波によるダメージはゆっくりと積み重なっていき、5年後、10年後と、年をとるにつれ目立つようになってきます

▽UV-B (BはBurn=やけどを意味する)
B波もオゾン層を通過し、私たちの体に降り注いでいます。B波は、皮膚の外側=表皮までしか届きませんが、日焼けをしてヒリヒリ・赤くなったというのがB波による極めてよくわかる皮膚へのダメージです。(サンバーン)

▽UV-C
C波は非常に強力で有害ですが、現在はそのほとんどがオゾン層で吸収されています。

@オゾン層の働き
オゾン層は太陽からの強烈な紫外線を遮断するシェルターの役目をしています。ところが、昨今のニュースで知られるように、南極の上空でオゾンホールが観測され、それが年ごとに強くなっているのがわかりました。そして、その元凶が、私たちの日常生活のなかで身近に使われているフロンガスであることがわかり、地球をまもるためのフロンガス禁止が決まりオゾンホールの拡大が止まりました。過去の25年の間に地球全体のオゾン層は3%減少しているそうです。
オゾン層が1%減少すると皮膚がんの発生率が6%上昇すると予測している報告もあり注意が必要です。

@紫外線に対する皮膚の防御
紫外線に対する皮膚の防御は、主として角質層やメラニン顆粒によってなされます。角質層は紫外線を反射散乱により紫外線の障害を減弱させます。したがって紫外線がたくさんあたると角質層は厚みをまして防ごうとします。メラニンは黒色の物質で日光・紫外線を吸収することによって生体を保護します。くわしくいうと、皮膚の細胞の核をメラニンが傘のように紫外線から守っています。
これらの紫外線防御機能をこえた紫外線の暴露は、赤くなったりヒリヒリしたりという反応をおこしますが、これは警報装置です。いわゆる日焼けはこの警報をならし、体は赤くなった後の色素沈着や角質増殖で次に来る紫外線にそなえるというわけです。

光老化の予防

皮膚に大敵な紫外線は、どんなに気をつけて防いでいても完璧に遮断することはまず不可能です。大切なことは日常のUVケアによって、このようなダメージを最小限に抑えることです。UVケアは、単に「紫外線を予防することに」とどまらず、「日焼け後のお手入れ」までを考える必要があります。

1)皮膚の外から紫外線の害をブロック(日焼け止め、サンスクリーン剤)
まずUVケアとして帽子や日傘、長袖はもちろん必要ですが、日焼け止め(サンスクリーン剤)で肌の「外」からできるだけ紫外線を防ぎましょう。

紫外線防止剤には紫外線吸収剤と紫外線散乱剤があります。紫外線吸収剤は、紫外線のエネルギーをキャッチして吸収剤自身の分子構造を変化させ熱として放出します。注意することはほとんどの吸収剤は紫外線B波だけを吸収し、A波は吸収しないということです。それに対して、紫外線散乱剤はほとんどの紫外線および可視光線を反射、散乱し物理的に紫外線を防ぎます。

スポーツや海、山への旅行中などの時だけSPFの高いサンスクリーン剤を使用し、普段は肌にやさしいものを使用してください。普段は日本での表示 SPF20までのものを使用してください。なぜならSPF値がそれ以上高くなっても紫外線防止効果は頭打ちになり、逆に高濃度の化合物の長期使用による副作用が心配になるからです。私は、サンスクリーン剤としては紫外線防止剤とともに抗酸化物質が入ったものが、低いSPF値(低い副作用)で高い効果を上げるからよく使用します。

2)皮膚の内から紫外線の害をブロック(抗酸化物質)
紫外線によって発生した活性酸素(フリーラジカル)を抑制・消去する抗酸化物質の補給によって「内」からも皮膚を守ります。
つまり、活性酸素によって酸化反応がおこること(細胞のDNAが傷つくこと)が老化ですが、過剰な活性酸素はある程度抗酸化剤によって取り除くことがでるのです。抗酸化物質とは活性酸素(フリーラジカル)を抑制・消去するもので、最もよく知られているのが、ビタミンE、C、ベータカロチンです。抗酸化剤は、紫外線吸収剤や散乱剤がブロックできなかった紫外線が与えるダメージを最低限に抑えます。

光老化の修復

できてしまったシミ、シワ、たるみをスキンケア器機(IPLやレーザー、RFなど)で取り除いたりしますが、一部だけが修復されても素肌がきれいにはなりません。やはり老化を修復する(若返る)ということ考えていくには素肌がきれいになることをまず考えるべきでしょう。スキンケアでは、たまった角質を毎日きちんと落とすために充分な洗顔と、アルファハイドロキシ酸(AHA)などを利用した角質ケアも重要になります。また、増加してしまったメラニン色素を抑制したり皮膚を正常に機能させるためのビタミンA(レチノールなど)と、フリーラジカルの攻撃から皮膚を守る抗酸化ビタミン(ビタミンC・E・βカロチン)などを含むスキンケア製品を使用するのもいいでしょう。毎日行うスキンケアは、薬ではケアしきれない繊細な皮膚のお手入れ・メンテナンスができます。また、最近では機能的に優れたスキンケア製品も増えてきました。私たち医師もスキンケアを予防医学として注目してきています。

1)ビタミンA(レチノールなど)の補給
老化肌の修復で忘れてならないのが、ビタミンAです。みずみずしい子供の肌にはビタミンAが満ちあふれています。紫外線と活性酸素で皮膚細胞にダメージがおこるとビタミンAが皮膚細胞の再生を促して健全な状態に戻します。しかし再生作業を繰り返すとビタミンAは次第に少なくなってきます。その紫外線によって減少する以上にビタミンAを補給することによって老化肌の正常化がおこり、正常になっただけで若返った感じがします。

<ビタミンAの働き>

・細胞の分裂と分裂を調整(ターンオーバーが正常な4週間になる、角質層が整然とする)
・線維芽細胞のDNAのダメージを修復(コラーゲンやエラスチン、保湿物質)
・メラノサイトのDNAのダメージを修復(メラニンの過剰な生成をとめる)
・コラーゲン、エラスチン、ムコ多糖体の生成を促進する
・真皮中の血管が発達し、皮膚の血色がよくなる
・皮脂のコントロールする
組織レベルでは、数ヶ月ビタミンAを塗ることにより、角質はコンパクトになり、表皮と真皮はふっくらとし、真皮のコラーゲンやエラスチンの量が増え質が
よくなってきます。

2)ビタミンCの補給
皮膚は、活性酸素(フリーラジカル)を除去するためにビタミンCを必要とします。(抗酸化物質としての働き)ビタミンCは水溶性ですから、体内に貯蔵しておくことができず、絶えず補給し続けなければなりません。人間の体内でビタミンCは作れないのです。また、皮膚にビタミンCを補給すると、皮膚の抗酸化機能が高まり、日焼けが軽減されるだけでなく線維芽細胞を刺激してコラーゲンやエラスチンをより多く生成するようになり、メラノサイトのメラニン生成を抑制します。こうした点を考えると、ビタミンCは紫外線防止剤よりはるかに優れたサンスクリーン剤といえます。しかも、皮膚に使用したビタミンCは細胞に吸収されるため、30~36時間効果が持続します。
ビタミンCの美白作用は、チロシナーゼを抑制することによって、メラニンの前駆体であるチロシンがメラニンに変換されないようにしてメラニンの生成を抑えます。

<ビタミンCの働き>

・抗酸化作用
・メラニンの生成を抑制する
・コラーゲン、エラスチンの生成を促進する

3)AHA(アルファハイドロキシ酸、俗称フルーツ酸)
多くの果物の中にあるので、一般的にはフルーツ酸と呼ばれています。酢酸(ぶどう)、グリコール酸(さとうきび)、乳酸(さとうきび)、リンゴ酸(りんご)、クエン酸(みかん)などがあります。歴史をさかのぼるとクレオパトラがロバのミルク風呂に入ったり、フランスのポンパドール夫人がシャンパンで顔を洗ったりした経験的な美顔術ですが、1980年代以降にAHA配合の化粧品がつくられました。
私はAHAの中では天然乳酸を好んで使用していますが、その理由は、皮膚の保湿性を高めるからというだけでなく、メラニンの配列によい影響を与えるのでシミにも効果があるからです。

<AHAの働き>

・表皮の角質層を自然に剥離する、下にある新しいより水分が豊富な細胞が押し上げられてくる(健康な皮膚細胞の活動を活発にする)
・皮膚の毛細血管の循環がよくなる
・線維芽細胞に刺激を与え、より多くのハイドロキシプロリンを生成(ハイドロキシプロリンはコラーゲンの前駆体として必要なアミノ酸)
・真皮のグリコサミノグリカン=ムコ多糖体の生成を促す(保湿力を高める)
大切なのはビタミンA、抗酸化物質(ビタミンC・E・βカロチン)、AHA、紫外線防止剤等の特徴をいかして組み合わせ、ひとりひとりの肌に合わせたスキンケアを行うことです。

光老化予防のためには何歳頃からスキンケアを始めるか?

生涯に浴びる紫外線量の半分は18歳までに浴びるとの報告もあり、早くから気をつけることに越したことはありません。老人性色素斑や脂漏性角化症が10代からみられる可能性を考えれば遅くとも10代前半から抗酸化ビタミンの補給などのスキンケアをスタートすべきです。

私たちをとりまく環境はかつてのような、優しい環境ではなくなりました。産業廃棄物で汚染され皮膚に付着する汚れやアレルゲンも変化しました。オゾン層も薄くなり、紫外線の地上への照射量も増加し、紫外線と紫外線による活性酸素(フリーラジカル)の攻撃は著しくなってきました。目にはみえませんが、光老化による皮膚の深部のダメージは幼少時から始まっています。本当は「ゼロ歳からのスキンケア」を提案します。スキンケアは単なる美容でなく、心と体のよい状態を保つため、老若男女すべての方に心がけて頂きたい健康法なのです。